DXF/DWGおよびDWFファイル形式
DXFとDWGは両方とも一般的なファイル形式です。さまざまなCADプログラムと描画プログラムの間で情報を交換するために利用されます。DXFはAutodesk社が普及を促進し管理しているプライベートな規格ですが、事実上の業界標準のフォーマットです。DWGは同じAutodesk社が自社の製品に利用するために、独自に開発したフォーマットです。DXFファイルとDWGファイルは両方とも、ほとんど同じ情報を保有しており、すべて同じオブジェクトを格納します。AutoCADの最新バージョンでは、DXFファイルの読み込み時にイメージへのリンクが失われるなどの問題があるため、通常このような場合にはDWGがより安全な選択肢です。本マニュアルの執筆時点で最新のDXF/DWGバージョンは2024です。Vectorworksプログラムはバージョン2.5から2024の取り込み、バージョン12から2024の取り出しを行えます。
DWFはAutodesk社が開発したフォーマットで、AutoCADなどのデザインソフトウエアを利用できない同僚と図面を効率的に共有できます。DWFファイルは高圧縮で、デバイスやソフトウエアに依存せず、3Dモデルを含めることができます。Vectorworksプログラムは、バージョン4.2、5.5、6.0(DWFテキストおよびバイナリ)、4.2および5.5(DWF圧縮バイナリ)、6.01(3D DWF)、6.02(DWFx)の取り込みと取り出しを行います。
変換時に失われる情報について
DXF/DWGまたはDWFの取り込みや取り出しは、Vectorworksファイルを保存したり、または開いたりすることと同じではありません。DXF/DWGの取り込みや取り出しは変換作業であって、一方通行です。その結果、変換中に情報が失われる可能性が出てきます。以下に挙げているのは、DXF/DWGおよびDWFがVectorworksと異なる処理をする項目です。これらは変換されたファイルに予期しない影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
項目 |
説明 |
単位 |
バージョン2000以降のDXF/DWGでは「単位」の概念をサポートしています。そのため、設定したファイルの単位を取り込むことができます(ただし単位を設定している場合に限ります)。DXF/DWG以前のバージョンでは単位をサポートしていません。また、バージョン2000とそれ以降の一部のファイルでも単位がサポートされていない場合があります。このようなファイルについてVectorworksプログラムは、メートルなのか、フィートやインチなのか、あるいはミクロンなのかを知る手立てがありません。この情報を判断するには、ファイルの作成者に確認する必要があります。単位をサポートしていないバージョン2000以降のDXF/DWGでは、5つの「単位」設定(建築系や機械系など)を備えています。これを利用して変換前の元の単位を推測しますが、推測された単位は場合によって調整する必要があります。 |
線の太さ |
Vectorworksプログラムでは、線の太さと色を別々に指定できます。AutoCADでもこの機能が導入されましたが、一部のAutoCADユーザーは依然として色を線の太さに割り当てて使用しています。バージョン14とそれ以前のDXF/DWGでは線の太さをまったくサポートしていません。色に割り当てられた線の太さを使って取り出すことを選択した場合、元の色は失われます。 |
カラーと模様 |
Vectorworksプログラムは現在のDXF/DWGより画像が鮮やかです。あらゆる場合において、VectorworksプログラムはDXF/DWGにつきものの制限をできるだけ少なくする変換方法を選択します。取り出しダイアログボックスのデフォルトバージョンは、データを受け取るソフトウエアがすべての情報を読み取れることを想定し、最良の結果を出力します。 DXF/DWGの2004より前のバージョンには固定のカラーパレット(背景色(黒または白)によって多少の変化があります)があり、またすべての図形には関連する塗りつぶし色が1つあります。DXFでは、円などの図形の面には色がありません(線の色だけがあります)。面に色がある図形はいくつかありますが、個々の線には色がありません。 DXF/DWGバージョン14以降では「ソリッドハッチング」の概念をサポートしています。ソリッドハッチングは円などの図形に関連付けることのできる個々の図形であり、これにより円の面に色があるように見せることができます。これらのハッチングの色を背景と同じ色にすることはできません(図形を隠すために白い背景の上に白い四角形を配置する場合など)。ソリッドハッチングは関連付けることができるため、Vectorworksプログラムでは枠と面で異なる2つの図形を設定するのではなく、ソリッドハッチングを取り込んで、関連付けた図形の面の色を設定できます。 DXF/DWGバージョン2000では、「ワイプアウト」の属性をサポートしています。これは基本的に、背景色と同じ色の多角形のイメージです。ワイプアウトが含まれるファイルを受け取りたくないと思うAutoCADユーザーもいるかもしれません。そのため、DXF/DWGの取り出しではソリッド面(ワイプアウトとソリッドハッチングを両方とも含む)を除外するというオプションを備えています。ワイプアウトは多角形でなければならず、関連付けることもできません。そのため、白い背景上の白い円を取り出して、再度Vectorworksファイルに取り込むと、面のない図形や、円の内側に白い面があって線がない多角形になります。多角形の滑らかさ(小面の数)は取り込み時の2D変換解像度設定で決まります。 面に模様のある図形は単色の塗りつぶしとして取り出されます。 Renderworksテクスチャに関連付けられたサーフェスハッチングは、標準のAutoCADハッチングとして取り出す必要があります。 |
レイヤとクラス |
Vectorworksの各デザインレイヤは、DXF/DWGのモデル空間と似ています。Vectorworks図面は、それぞれに異なる縮尺と視点を備えた、目に見える多くのデザインレイヤを同時に保持できます。一方、DXF/DWGファイルでは1つのモデル空間のみが可能です。そのためVectorworksプログラムでは複数のデザインレイヤを統合する必要があり、一部の情報が失われる可能性があります。取り出し後は通常、図面の表示と印刷が可能ですが、個別のレイヤの縮尺、図形の座標、見えない図形の情報は失われる可能性があります。 |
グループとシンボル |
Vectorworksプログラムでは、シンボルを使用します。シンボルは図形であり、繰り返し図面に貼り込んでもファイルサイズはほとんど大きくならない上に、1つを編集するとコピーもすべて更新されるという特徴があります。また、Vectorworksにはグループ図形があります。これは図形をグループにまとめたもので、1つの図形として扱います。VectorworksでいうシンボルはDXF/DWGでは「ブロック」と呼ばれます。また、Vectorworksでいうグループに最も近い概念は「匿名ブロック」です。これは名前の付いていないシンボルのようなものです。名前付きブロックは匿名ブロックとは異なり、AutoCADで簡単に編集できるほか、新しいブロックを図面に挿入できます。ただし名前付きブロックは、シンボルとしてVectorworksファイルに再度取り込まれます。これが望ましくない場合もあります。そのためVectorworksプログラムでは、名前付きブロックで問題が生じた場合、匿名ブロックとしてグループを取り出すことができます。 |
属性とリンクテキスト |
DXF/DWGには、Vectorworksのレコードフォーマットに対応するデータベースレコードがありません。DXF/DWGにあるのは属性定義(「attdefs」)と呼ばれる図形です。この属性定義はブロック/シンボルの中に配置すると、ちょうどVectorworksファイルのリンクテキストのように扱われます。ただしこの処理には非常にばらつきがあり、この図形の変換が常にうまくいくとは限りません。DXF/DWGのブロックの属性は、レコードフォーマットが添付されたブロックとして取り出されるもの(シンボル、グループ、プラグインオブジェクト、またはレイヤリンク)向けに作成されます。DXF/DWGではブロックにしか属性定義がないため、Vectorworksのその他のオブジェクト(線や円など)のレコードフォーマット情報はDXF/DWGに取り出されないことがあります。 |
名前 |
文字列をDXF/DWGのバージョン2000以降に取り出す場合、レイヤ名称やブロック名称は変更されずにそのまま利用されます。小文字やスペースなどUnicode文字の変換は正確にサポートされます(ただし、<> " `, /¥: ? * | =)を除きます。これらの文字は取り出し処理中に変換されます)。2000より前のバージョンに取り出すと、すべての名前が大文字に変換されます。スペースや特殊記号はすべてアンダースコア(下線)に変換されます。どのバージョンでも、DXFおよびDWGの各属性タグの名前にはスペースを使用できません。レコードフィールドの名前にスペースが含まれる場合はアンダースコアに変換されます。 |
スタイル付きのマルチテキスト |
マルチテキストに含まれるさまざまなサイズのフォントは、太字、下線付き、またはイタリック体で、次の行にラップします。このテキスト形式はDXF/DWGのバージョン13以降でサポートされています。マルチテキストはこれより古いバージョンではサポートされていないため、テキストをラッピングすると別の行になります。 |
レイヤ表示モード |
DXF/DWGは、レイヤ表示モードをサポートしていません。そのため描画変換モード(Mac 版およびWindows 版で GDI+ イメージングを使用が有効になっている場合は、不透明は100%)だけが使用されます。 |
寸法 |
VectorworksプログラムとAutoCADプログラムでは、寸法、単位、寸法規格の取り扱いで多くの相違点があります。また、ファイルで使用されるすべての寸法規格に適切な寸法スタイルが作成されます。そのため、受け取り手が寸法を修正したり、新しい寸法を作成したりしても、大きな違いがあるようには見えません。取り込み時に元の表示が維持されるように、DXF/DWGファイルの寸法スタイルがVectorworksファイルのカスタム寸法規格として作成されます。 |
テクスチャ |
VectorworksテクスチャとAutoCADマテリアルは、テクスチャの一貫した取り込みに役立つ色属性およびイメージシェーダタイプをサポートしていますが、AutoCADが現在提供している追加のシェーダタイプ(チェッカー、グラデーション、大理石、ノイズ、しみ、タイル、波、木)は、Vectorworksが使用するライブラリではサポートしていません。イメージファイル自体が取り込みに含まれている場合にのみ、イメージシェーダタイプを取り込むことができます。これらのタイプを取り込む場合、Vectorworksソフトウエアは定義済みの色属性を使用します。さらに、AutoCADの非金属の反射属性は、Vectorworksプログラムでは自動的にプラスチックの反射属性に変換されます。AutoCADのグローバルマテリアルは、変更していない場合にのみ正しく取り込まれます。DXF/DWGファイルのマテリアルプロパティをByBlockに設定している場合、Vectorworksではブロック内のエンティティの定義方法が異なるため、取り込んだ図形の最終的な表示は元のファイルと一致しないことがあります。 |