概念:フェージング
難易度:中級
Vectorworksのフェージング機能は、リノベーションなどの段階的なプロジェクトに特化したワークフローを備えており、プロジェクト全体を通じてオブジェクトの新設、撤去、移設、保管などを行うフェーズを指定できます。つまり、フェージングとは作られる対象ではなく、作られる時間に関するものです。各フェーズは一定の時間を表し、図面の各オブジェクトは各フェーズとの関連において存在します。ファイルには常にアクティブフェーズが必要になります。プロジェクトの管理で重要なのは、オブジェクトを新設する時のフェーズ、撤去や移設をする時のフェーズ、およびアクティブフェーズにおけるステータスです。
フェージングは現在、Vectorworks Design Suite製品で利用できますが、意匠系および内装系プロジェクトでの使用に最適化されています。作業画面の編集を使用して、フェージングツールおよびコマンドをVectorworks LandmarkおよびSpotlightの作業画面に追加する必要があります。
フェーズを管理する
最も基本的なリノベーションプロジェクトには少なくとも2つのフェーズが存在します。1つはリノベーション前の現状(竣工図)を文書化するフェーズで、もう1つはリノベーション中に完了した解体と新規建設を文書化するフェーズです。より複雑なプロジェクトでは、複数のフェーズを使用する場合があります。各プロジェクトに適したフェーズの名前、順番、および構造になるように、フェーズを追加したり、既存のフェーズを隣接するフェーズに統合したり、フェーズの名前やフェーズに関するその他の詳細を編集したりできます。図面に追加したオブジェクトにフェーズを設定して使用を開始すると、フェーズの順番を変更できません。また、フェーズは別のフェーズに統合できるだけであり、削除することはできません。これらの変更を行うと、フェーズ内のオブジェクトに対して実現不可能な処理の順番が作成される可能性があるためです。
オブジェクトに対するそれぞれの変更内容は、自動的にアクティブフェーズに割り当てられます。ファイルで作業する際は、オブジェクトの追加、撤去、および移設に応じて、必ず適切なフェーズをアクティブにする必要があります。表示バーでフェーズを管理し、さらにアクティブフェーズを選択して表示できるため(表示バーにフェージンググループをピン留めしている場合)、フェーズは常に表示されます。
文書化するプロジェクトでフェージングを使用せず、あらゆるものを基本的に新規建設にする場合でも、すべてのVectorworksファイルには少なくとも1つのフェーズが必要になります。フェーズを設定しないプロジェクトの場合は、表示バーからフェージンググループのピン留めを解除することで、この機能が存在しないものとして作業を進めることができます。
フェージングでオブジェクトを管理する
各オブジェクトには適切なフェージングデータが不可欠です。ファイルのオブジェクトは、新設、解体、撤去、または移設時に自動的にアクティブフェーズに割り当てられますが、選択したオブジェクトインスタンスのフェージングデータはオブジェクト情報パレットで変更できます。オブジェクト情報パレットは、オブジェクト/インスタンスのフェージングデータを一括管理するためのハブですが、他にもオブジェクトのフェージングを追跡および管理するのに役立つツール、コマンド、およびパレットが用意されており、たとえばフェージングパレット、解体/撤去ツール、同じオブジェクトのリンク/フェーズ設定されたインスタンスに移動するためのコンテキストメニューコマンドなどがあります。
オブジェクトのフェージングはデザインレイヤでのみ管理できます。一部のVectorworks LandmarkおよびSpotlight固有のプラグインオブジェクト、太陽光設定などのオブジェクト、一部の注釈など、一部のオブジェクトにはフェーズを設定できません。
ある壁を解体した時に窓を撤去して保管した後、新しい壁に移設する場合など、1つのオブジェクトが異なるフェーズで複数の場所に配置される場合があります。実際の同じオブジェクトに対して、このように異なる用途/配置を区別するために、これらをインスタンスと呼びます。1つのオブジェクトには複数のインスタンスを含めることができ、それぞれが独自のフェージングデータを備えています。
オブジェクト情報パレットには、オブジェクトインスタンスのアクティブフェーズでのステータスが表示され、現在のアクティブフェーズに対するステータスが反映されます。たとえば、フェーズ1で追加した窓の場合、フェーズ1でのステータスは新設になります。フェーズ2では、そのオブジェクトはもはや新設ではなく、ステータスは既存になります。フェーズ2でオブジェクトを撤去するとステータスは撤去に変更され、同じフェーズで移設するとステータスは移設に変更されます。そのオブジェクトに対して行われた最終処理は、常にアクティブフェーズに関連して示されます。フェーズ3では、フェーズ2で移設した窓のステータスは既存となります。これは、フェーズ3が開始された時点で、その窓はその場所にすでに存在しているためです。
1つのオブジェクトを複数のインスタンスにわたって追跡し、各フェーズに関連するインスタンスのステータスを示すことが不可欠です。フェージング機能を使用すると、どのオブジェクトが最初の場所から撤去され、一時的に保管された後、プロジェクト内の別の場所に配置された可能性があるかを追跡できます。オブジェクトのインスタンスの1つから、同じオブジェクトの前または次のインスタンスに移動し、図面のオブジェクトのさまざまな位置や使用されている順番を確認できます。各インスタンスは個別に選択でき、オブジェクト情報パレットでフェージングデータを確認または変更できます。
各インスタンスのフェージングデータは個別に編集できますが、個々のオブジェクトインスタンスを編集する時は注意が必要です。たとえば、インスタンス間で窓の額縁や窓台は変更できますが、サイズや形状など、窓のユニット自体に影響を与える変更はできません。各インスタンスは基本的に同じオブジェクトになります。
構成要素ベースのオブジェクト(壁、スラブ、屋根、舗床など)は、フェージングを設定できるように単一のオブジェクトとして扱われます。個々の構成要素に、親オブジェクトとは異なるフェーズステータスを設定することはできません。増築時に外壁を内壁に変えるなど、オブジェクトの一部の構成要素のみを解体する必要がある場合は、一部の構成要素のみを含む追加のオブジェクトスタイルを作成し、それらのオブジェクトを使用して変更を管理する必要があります。
フェージング機能では、処理の論理的な順番(施工時に物理的なオブジェクトで完了できる順番)が維持されるため、別のインスタンスのフェージングデータが無効になるような方法でインスタンスを変更しようとすると警告が表示されます。たとえば、後のフェーズで再利用するオブジェクトの前のインスタンスを撤去するのではなく解体しようとすると、警告が表示され、問題を解決するためのオプションが提示されます。同様に、ホストされるオブジェクト(窓やドアなど)を、それをホストするオブジェクト(壁など)より後に撤去することはできません。
大型ごみ容器や簡易トイレといった一部のオブジェクトを仮設として指定し、それらが1つ以上のフェーズで現場に存在するものの、プロジェクトの恒久的な要素ではないことを示すこともできます。仮設ステータスを使用すると、寸法や室内展開図マーカーといったデザインレイヤの注釈が、指定したフェーズにのみ存在するように設定することもできます。オブジェクトは、オブジェクト情報パレットで最初に仮設とマークされている場合にのみ、それらが作成されたフェーズと同じフェーズから撤去できます。
フェーズ設定されたプロジェクトを可視化する
データの可視化を使用して、アクティブフェーズにおけるステータスに基づき、デザインレイヤまたはシートレイヤビューポートで表示するインスタンスおよびその外観をいつでも制御できます。データの可視化を使用しない場合、図面のオブジェクトは、いつ新設、撤去、または移設されたかに関係なく、すべて同じ外観で表示されます。図面領域でフェージングの時間的要素を表示するには、データの可視化が必要になります。

データの可視化により、第1フェーズと第2フェーズの間の変更が表示されています。
デザインレイヤでは、構成要素ベースのオブジェクトやプラグインオブジェクトおよびシンボルに対して、アクティブフェーズにおけるステータスに基づき、ファイル設定を使用して詳細レベル(低)を設定できます。各シートレイヤビューポートまたはビューポートスタイルのオブジェクトに対し、フェージングに関連する詳細レベル(低)を設定することもできます。これらの設定は、デザインレイヤの詳細レベルに関するデフォルトのファイル設定、および各シートレイヤビューポートの詳細レベル設定より優先されます。
フェーズ設定されたプロジェクトのレポート作成や文書化を行う
検索条件ダイアログボックス、関数選択ダイアログボックス、ワークシート関数などで使用できる検索条件や関数により、ワークシート、データの可視化、ビューポート、データタグ、グラフィック凡例、登録ビューなど、多くの一般的なレポート作成、可視化、および注釈ツールでオブジェクトのフェージングデータを使用できます。
Vectorworksファイルを別の形式に取り出すと、ほとんどの場合、ファイルは「見たままの」状態で取り出されます。つまり、オブジェクトをデザインレイヤから取り出す場合、取り出す時のアクティブフェーズに存在するままの状態で取り出されます。同様に、シートレイヤを取り出す場合、オブジェクトはビューポートに表示されているフェーズステータスで取り出されます。ただし、DXF/DWGおよびIFC形式への取り出しはより複雑です。DXF/DWGおよびDWFの取り出しオプションおよびIFCプロジェクトを取り出すを参照してください。
参照中のデザインレイヤやIFCプロジェクトを取り込む場合は、それらのフェーズをVectorworksファイルにマッピングすることで、適切な変更を適切な順番で行うことができます。参照ファイルを追加および編集するおよびIFCファイルを取り込むを参照してください。
